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なぜSiCパワーデバイスのめっきは剥がれるのか?

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なぜSiCパワーデバイスのめっきは剥がれるのか?

SiC(炭化ケイ素)を採用した次世代パワー半導体の開発において、電極部のめっきはく離はデバイスの信頼性と寿命を大きく左右する重大な課題です。

特に、設計・開発担当者様が最も恐れるのは「市場に出てからの製品不良によるリコール」ではないでしょうか。

近年、EVや産業機器の高効率化に伴い、パワーデバイスには過酷な高温環境下での安定動作が求められており、めっき層の密着性確保がこれまで以上に重要視されています。

高温、高圧、大電流という過酷な環境下で動作するパワーデバイスにとって、チップと基板をバンプ接合する際に必要なUBMの信頼性は、製品寿命そのものを左右する生命線といえます。

しかし、従来のロジック・メモリー系と同じめっきプロセスでは、パワーデバイス特有の仕様が災いし、アルミの局部腐食や密着不良を招くリスクが高まってしまいます。

そこで、この記事では、パワーデバイスのめっきが剥がれる主な原因や、物理的・化学的なメカニズム、そして信頼性を劇的に向上させるための具体的な対策技術についてご紹介いたします。

1. はじめに:次世代パワー半導体に求められる「絶対的信頼性」

SiC/GaNの普及と実装技術の変遷

脱炭素社会の実現に向け、EV、再生可能エネルギー、データセンターといった分野でパワー半導体の需要が急拡大しています。

そして、これらの電力変換効率を劇的に向上させるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)ワイドバンドギャップ半導体を用いた次世代パワー半導体の社会実装が急速に進んでいます

ワイドバンドギャップ半導体は、従来のシリコン(Si)に比べて高温・高周波での動作が可能であり、高耐圧・低損失という優れた特性を持っています。

リードフレームからフリップチップ実装へのシフト

デバイスの高性能化に伴い、パッケージング技術も進化を遂げています。
従来のリードフレーム技術では、端子数やピッチの縮小、小型化・高密度化への対応が困難になりつつあります。
このため、1990年代から登場したフリップチップ実装が、現代のパワーデバイスにおいても重要な役割を担っています。

優れた放熱性と高密度実装を支える「UBM」の重要性

フリップチップ実装は、チップ裏面全体に電極を配置できるため、高密度実装が可能です。また、放熱性が高く、優れた電気特性を実現できることが大きなメリットです。

この接続の核となるのが、電極パッド上に形成されるUBM(Under Bump Metal)です。UBMは、アルミ電極とはんだ等の接合材との仲介役となり、電気的な接続だけでなく、熱を効率よく逃がし、物理的な接合強度を維持する基盤となってくれます。

開発現場の深刻な懸念:はく離(デラミネーション)とリコールリスク

設計・開発担当者にとって最大の懸念事項は、製品に対する「信頼性」の低下です。特に、過酷な環境下で使用されるパワーデバイスにおいて、市場投入後の「はく離(デラミネーション)」は、即座に致命的な故障へとつながります。

高温・大電流環境下での接合信頼性が市場競争力を決める

市場で求められるのは、熱・機械的ストレスへの高い耐性です。パワーデバイスは、動作時に激しい熱サイクルにさらされるためです。

特にSiCデバイスは300℃を超える高温域での動作も想定されるため、めっき層の密着性が不十分であれば、熱膨張差によるストレスではく離が生じます。これは即、製品寿命の終わりを意味し、大規模なリコールリスクに直結するため、極めて高い接合信頼性が求められています。

2. なぜパワーデバイスのめっきは剥がれるのか?(メカニズム解析) 

めっき面積率の大幅な増大(50%以上)による浴負荷の影響

パワーデバイスはウェハ上のめっき面積率が非常に高いのが特徴です。ロジック系が数%から10%程度であるのに対し、パワーデバイスでは50%を超えることも珍しくありません。

これにより、めっき前処理も含めた工程において、各薬液中での副生成物や溶解したアルミニウムの蓄積など、薬液に与える影響が大きくなるため、めっき皮膜の品質管理が困難になります。

はく離の主因:アルミニウム電極の局部腐食(ピット)

めっきの密着性を左右する重要工程である前処理、なかでもジンケート処理(亜鉛置換)に不具合が生じると、パワーデバイスにおける接合信頼性を低下させる要因の一つとなります。

ジンケート処理(亜鉛置換)時に発生する深い腐食孔のリスク

アルミ電極に無電解ニッケルめっきを行うには、置換反応を開始させるためにアルミを亜鉛へ置換するジンケート処理が必要です。この工程がないとめっきが析出せず、密着性も確保できません。ただし、パワーデバイスではアルミ層が厚く電極面積も大きいため、ジンケート処理時の反応負荷が増大し、表面状態のばらつきが置換反応に影響しやすくなります。その結果、亜鉛置換が局所的に進みすぎ、アルミを掘り込む「局部腐食(ピット)」が発生しやすくなります。

腐食によって密着性が不均一になり、熱サイクルによるはく離を誘発

ピットが形成されると、その後のニッケルめっきが不均一に成長し、界面に脆弱な構造が形成されます。その結果、見かけ上の初期密着力は確保できているように見えても、熱サイクル試験時などのストレスに耐え切れず、接合部のクラックやはく離が発生するのです。

3. 構造的欠陥で見る:信頼性を損なう2つの技術的落とし穴

落とし穴①:ジンケート処理における不均一なZn皮膜

ジンケート処理によって形成される亜鉛(Zn)皮膜が粗大であったり、不均一であったりすると、その上のニッケル層との間に微細な隙間や欠陥が生じます。

腐食ピットにめっきが潜り込み、見かけ上の密着は保たれても、応力集中により破綻するメカニズム

アルミが深く浸食されたピット内にめっきが入り込むと、アンカー効果によって一時的に強度は出ますが、アルミ自体が「スカスカ」の状態になっているため、金属としての構造強度が著しく低下しています。一見、アンカー効果で密着しているように見えますが、過酷な環境下では、この脆弱なアルミ層自体が破壊される「素材破壊」に近い形ではく離が進行します。

落とし穴②:金めっき厚膜化に伴う下地ニッケルの溶解

パワーデバイスでは、酸化防止や、はんだ濡れ性を確保するために施される「置換金(Au)めっき」にも大きなリスクが存在します。

従来の置換型金めっきでは、厚膜化の過程でニッケル層が局部腐食を起こす

一般的な置換金めっきは、下地のニッケルを溶かしながら金が析出します。金を厚く付けようとすると(厚金化)、その分だけ下地のニッケルが溶解され、界面に「ブラックパッド」と呼ばれる腐食層や空隙(カーケンダルボイド)が形成されます。

脆弱な金属間化合物(IMC)の異常成長と信頼性の低下

ニッケル層が腐食された状態で、はんだ接合を行うと、脆い金属間化合物(IMC)が異常成長しやすくなります。これが、衝撃や熱膨張に対して極めて脆い接合部となってしまい、パワーデバイスに不可欠な長期信頼性を損なう第二の要因となります。

4. 解決策:メルテックスが提案する「局部腐食ゼロ」のUBMプロセス

メルテックスでは、これらの課題を解決するために、アルミへのダメージを最小限に抑えつつ密着性を実現するUBMプロセスを開発しました。

【特許技術】緻密なジンケート膜によるアルミ電極の保護

メルテックスのジンケート処理技術は、独自の添加剤処方により、アルミの過剰な溶解を抑制しつつ、極めて緻密で均一な亜鉛皮膜を形成します。

ジンケートの最適化により、腐食を抑制し平滑な皮膜を形成

この技術を用いると、断面観察においてアルミ電極の浸食がほとんど見られない「平滑な界面」を維持できます。腐食ピットをゼロに近づけることで、ニッケル層との密着を原子レベルで安定させ、応力集中を防ぐことが可能となります。

【次世代技術】置換還元型金めっきによる厚金化と高信頼性の両立

金めっき工程では、下地ニッケルを保護しながら厚膜化が可能な「置換還元型金めっき」を提案しています。

ニッケルの溶解を抑えつつ、0.1〜0.5μmの厚金形成を実現

このプロセスは、置換反応と還元反応をバランスよく進行させることで、下地ニッケルの腐食を極限まで抑えながら、0.1μmから0.5μmといった厚い金皮膜を形成できます。

はんだ濡れ性とバリア層保護の究極のバランス

ニッケル層が健全に保たれるため、はんだ接合後の接合強度が安定し、パワーサイクル試験においても優れた耐性を示します。まさに、はんだ濡れ性の向上とバリア層(ニッケル)の保護を両立した、パワーデバイスに最適なソリューションだといえます。

5. 断面解析が証明するスペックインの裏付け

断面SEM写真が証明する界面の優位性

理論だけでなく、実際のSEM観察による断面写真が、当社のプロセスによる改善効果を明確に証明しています。

従来プロセス vs 改良プロセスのアルミ表面状態の明らかな差

SEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察では、従来プロセスで見られた鋭い腐食ピットが、メルテックスの改良プロセスでは消失していることが明確に確認されています。この界面の「美しさ」こそが、信頼性の源泉なのです。
 
aluminum_corrosion.png

緻密なUBM層がもたらす、過酷な熱ストレスへの高い耐性

先の写真のように腐食のない緻密な界面を形成することは、熱・機械的ストレスへの耐性向上に直結します。脆弱なピット(腐食孔)が存在しないため応力集中が防がれ、過酷な温度変化を伴うパワーデバイスの動作環境下においても、初期の高い接合強度を維持することが可能となります。

パワーデバイス特有の「反り」と「熱膨張」を制御する低応力設計

大口径ウェハの反りは歩留まりに直結します。ウェハの薄化が進む中で問題となる「反り」に対しても、めっき膜自体の内部応力を低減する設計がなされています。これにより、プロセス中のウェハ破損を防ぎ、歩留まり向上に貢献します。

6. まとめ:確かな表面処理技術がパワーデバイスの未来を支える

信頼性の高いUBMプロセスの選定がスペックインの鍵

パワー半導体の需要拡大に伴い、技術要求は高度化し続けています。パワーデバイスの性能を最大限に引き出し、過酷な市場環境で勝ち残るためには、単に「付着している」だけのめっきではなく、界面の局部腐食をコントロールし、熱ストレスを計算に入れた「高信頼性UBM」の選定が不可欠です。 

結び:開発のパートナーとしてのメルテックス

次世代パワー半導体の開発において、アルミ電極の腐食や、めっきのはく離、厚金化の課題にお悩みの方は、ぜひメルテックスにご相談ください。貴社の製品が次世代社会のインフラを支える「絶対的な信頼性」を確保できるよう、全力でサポートいたします。

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